研究内容

 上皮細胞は、発生の最初に卵細胞が分裂して始めにできてくる細胞ですし、また、体を被い、表皮から消化管までさまざまな形態形成を行いながら、 機能的な器官を作る中心的な細胞です。体を被うという性質から、生体外と生体内とを分ける基本的な役割を持ちます。同種の細胞が繋がってシートを作るにあたって、 上皮細胞は細胞間接着装置を作ります。接着タンパクと細胞間を力学的に繋げるために細胞骨格との連結を担うタンパク作っているのがアドへレンスジャンクション (Adherens junction, AJ)と呼ばれる細胞間接着装置です。上皮細胞では生体内の環境を維持するため、物質の輸送やそれを支えるタンパク、オルガネラの配置は偏っており、 その偏りがあることを上皮極性と呼びます。

図1    

 実験条件を自由に変え易い培養細胞を主な材料にして、できるだけシンプルな実験系から基本的に重要な問いに対する答えを得ようと考えています。そのためには、 新たなアイデアによる実験系の確立や、技術開発などの創意工夫がとても重要です。培養細胞から器官形成、個体へとつながるES細胞には大いに注目しています。


現在のプロジェクト

 (1)αカテニンの張力感受性と多細胞形態形成における意義
 (2)αカテニンのアクチン結合性の調節機構とその意義
 (3)上皮細胞の極性形成機構
 (4)上皮細胞における隣接する細胞の生死を認識する機構

(1)αカテニンの張力感受性と多細胞形態形成における意義
 上に述べた細胞間接着装置AJにはアクチン繊維が結合していることが知られています。アクチン繊維はミオシン繊維と相互作用して、モータータンパクミオシンIIの力を伝え、 その結果、AJは細胞の内側から引っ張られることになります。AJには細胞接着分子カドヘリンがあり、細胞の外では隣接する細胞のカドヘリンと結合するため、AJを介して 細胞内の収縮力が隣接する細胞に伝わります。それぞれの細胞でそのようなことが起こるので、一般に上皮細胞シートの中では隣り合う細胞はAJを介して引っ張りあっています。 その明確な理由は明らかになっていませんが、私たちは、上皮細胞シートの維持そのものに重要であると考えています。強い力がかかって上皮シートが折れ曲がり、神経管等を作る場合 はもちろん、AJによる力の適切な伝達が必要です(図1)。また、上皮シート内の細胞が死んで、上皮のバリア機能が落ちた場合には、細胞はすばやく、死細胞を除去するとともに その場所を隣接する細胞が異動することによって塞ぎます。このときも、極性のある上皮の場合は、AJを介して引っ張りあうことで図2 (死細胞と生細胞の間では引っ張り合いは当然 起こらず、死細胞に面している生細胞の間で引っ張り合いが強くなるということがわかっている)、損傷修復が起こるのです。このような場合、AJがその増加した収縮力に耐えられずに 壊れてしまい、細胞が解離してしまっては全体の形態形成に繋がりません。また、それぞれの細胞の収縮力が完全に同一であるとは考えられず、多少の差がある場合、強い細胞が収縮し、 周囲の細胞が引っ張られて伸びてしまうようでも、全体の形態形成に繋がりません。多少の差があっても、一人勝ちを起こさせないような、仕組みがあると好都合です。
 私たちはAJ内の主要なアクチン結合タンパクの一つビンキュリンがAJに力がかかる時は集積し、力がかからなくなると解離することを見いだしました(Miyake et al. 2006)。 強い力で引っ張られた時にはそれに対抗できるようにアクチン結合タンパクの量を増やして、より多くのアクチン繊維がAJに結合できるようにするという仕組みがあるかのようです。 力が働かなくなるとビンキュリンは離れ、結合するアクチン繊維の量は減ると考えられます。収縮力の高い細胞が、隣接する細胞を引っ張りすぎて、AJが壊れる等した場合は、 もう隣接する細胞が力を支えてくれないので、力がかからないことになり、ビンキュリンも離れ、細胞内の収縮力がAJに伝わらなくなります。これは一人勝ちしそうな細胞が、 力を緩めて、隣接する細胞が引っ張り返すのを待つということだと考えられ、とてもうまくできたフィードバックの機構があるかのようです。
 それは本当か、どのような仕組みなのか、それがわかって本当の理解になります。ビンキュリンがAJにやってくるのは、カドヘリンと複合体を作っているタンパクの一つ α-カテニンが結合相手だからであることがすでにわかっていました。そこで、α-カテニン分子に力の程度を感知して、ビンキュリンに結合したりしなくなったりする仕組みがある のでは?と考えました。いろいろと実験をしたところ、図2(張力センサーの図のコピー.jpg)のように、α-カテニンにはビンキュリンに結合する領域に隣接して、その結合を邪魔する 阻害領域があることがわかりました。その阻害が解けるのは、α-カテニンが引っ張られたときなのです。すなわちα-カテニンは張力感受性を持つAJタンパクで、その性質を使って AJにも張力感受性(力がかかるとビンキュリンがやってきて強化する)生まれているわけです(Yonemura et al., 2010)
 現在、進行中なのは、それではα-カテニンのどこがどうなって阻害ということが起こり、どうなってそれが解除されるのかを分子レベルで理解すること、また、 都合の良い仕組みだと考えてきていますが、本当にどのくらい重要なのかを、特に上皮細胞の形態形成を例に検証したいということです。上皮細胞は二次元培養に限らず 三次元培養も行い、正常なα-カテニンを発現する細胞と、張力感受性が異常なα-カテニンの変異体のみを発現する細胞での違いを見いだしてきています。 構造生物学の専門家や数理科学の専門家と協力して理解を深め、将来的には張力感受性が形態形成に対して重要である場合を見極め、形態形成を操る技術の一つへ繋げたいと思います。 一方、張力感受性がそれほど重要でない場面では何が重要であるのかという新しいテーマがあぶり出されてくると思われます。

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(2)αカテニンのアクチン結合性の調節機構とその意義
  この上述したビンキュリン結合の張力感受性に関係するものの、少し違う性質を知ろうとしています。張力感受性を持つということはα-カテニンが引っ張られるからでありますが、 そのN末ではカドヘリン-カテニン複合体を形成しますので、隣接する細胞から引っ張られます。一方、C末はアクチン繊維結合能があり、細胞内のアクチン繊維に引っ張られると考えられます。 α-カテニンはカドヘリン-カテニン複合体を形成しているときは、生化学的にはアクチン繊維結合能が見られず、精製された単体ではアクチン繊維に結合することが報告されており、 それからすると少なくともα-カテニンのアクチン繊維結合能は何らかの制御を受けていると考えられます。しかし、細胞内ではAJに張力感受性を示す、すなわち、 カドヘリン-カテニン複合体内の引っ張られうるα-カテニンが存在していることも明らかです。ということは細胞内でも状況によりアクチン繊維結合能は上がったり下がったりしているように思われます。
  別の観点から考えますと、AJが力を伝えて形態形成を行うような時はAJ間の結合も、AJとアクチン繊維との結合も安定して強固であることが望ましいのですが、 上皮細胞シート内の細胞が緩く結合は保ちつつ、大規模に配置換えを行うような時は、AJ間やAJとアクチン繊維との結合が安定して強固だとかえって、邪魔になるように思われます。 また、カドヘリンが小胞に含まれる形で細胞内に取り込まれリサイクルするような時も、カドヘリン-カテニン複合体に強固にアクチン繊維が結合していると円滑に小胞の輸送や融合が起きに くいように思われます。
  以上のことから、アクチン繊維とα-カテニンとの結合の制御の仕組みも重要でおもしろいテーマだと考えられ、精力的に取り組んでいるところです。 私は、α-カテニンとアクチン繊維との結合は自転車のギアとチェーンの関係の様に、一方方向に力をかける時には噛み合い、しっかり結合するが、力がかからない、あるいは異なる方向に力がかかる時 には噛み合ず、結合が見られない、などの仕組みもあるのではないか、と想像しています(Yonemura 2011-a, Yonemura 2011-b)。

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(3)上皮細胞の極性形成機構
  上皮細胞は二次元のシートを作るのが基本です。それが立体的に袋を作ったのが多細胞動物の原型です。このシートの意味は、生体外と区別して生体内という環境を作ることです。 上皮シートの生体内側には基底膜という特殊な細胞外基質(ECM)成分からなる構造が接しています。上皮細胞の基底膜に接する細胞膜をbasal membraneと呼び、その反対側、生体の外に面している 細胞膜はapical membraneと呼びます。隣接する細胞と接している細胞膜はlateral membraneです。Basal membraneとlateral membraneとは性質的にほとんど同じとも思われ、極性を考える上では basolateral membraneと、しばしば一くくりにされます。栄養等を吸収する上皮細胞はapical membraneには栄養のトランスポーターなどが配置されています。この場合、Apical membraneは その面積を大きくするために微絨毛のようなアクチン繊維の束を軸とした特殊な細胞骨格に裏打ちされた形状を取っています。取り込まれた栄養は逆戻りせず、basal membraneから放出されます。 また、lateral membraneのapicalよりにはAJとさらにapicalよりに近接してtight junction (TJ)があります。特にTJは細胞間の分子の移動(漏れ)を制御する構造です。上皮シートで覆われた 区画の分子組成の違いを保つために分子の通行を厳しく制限する場合もあります。これを上皮シートのバリア機能と言います。また、TJはむしろ特定の分子を選択的に通過させるチャンネルの役割 を果たすこともあります。栄養を取り込むために必要なナトリウムイオンが生体外から、生体内に入ってしまうと、細胞はナトリウムポンプを使ってナトリウムをbasolateral側に汲み出します。 そのままではapical側である管腔内のナトリウム濃度が下がり栄養が吸収できなくなるのでTJがナトリウムを選択的に透過させ、管腔側に戻します。このようにapical membraneとbasolateral membrane とは分子組成も構造も機能も異なり、また細胞質でも輸送の方向性や細胞骨格の分布など分子、構造レベルの偏りがあります。これを上皮極性といいます。TJとAJとはちょうど apical membraneとbasolateral membraneとの境界に形成され、TJの機能を考えても上皮極性と密接な関係があると考えられてきています。上皮極性は上に述べたように多細胞動物の体を作る上で 本質的に大切なものであり、その破綻は上皮シートの機能の破綻につながり、細胞の分化やがん化とも関係しています。そのため上皮極性を作り、維持する機構は長い間注目を浴び続けています。 関係のある遺伝子も多くわかってきましたが、それら相互の関係やapicalの勢力を広げる因子であるとか、basolateral の勢力を広げる因子であるというような捉えられ方をしていて全体像は つかめていません。初めに何を頼りに、何が極性を決めるのか、また、決定した極性に従って実際の分子や構造の偏りをもたらすのはどんな仕組みによるのかなどは、整然と理解されていません。 上皮極性は上皮がシートになった時に重要なのだから、細胞間接着と密接に関係があると長らく信じられてきましたが、この10年のあいだに、細胞間接着がなくてもここの上皮細胞は上皮極性 を作りうる例がいくつも報告されてきました。TJなどの接着装置ができたことを、上皮極性ができた証拠とみなす研究者もまだ多いのですが、そう考えると、上皮極性に重要な因子も、 接着装置形成だけに関わる因子も見分けがつかなくなります。そのようなことから、しっかりした全体像を把握するために細胞間接着を起こさず、しっかりした上皮極性を持つ培養細胞を使うという 工夫をした系を使って、上皮極性の機構を研究しています。

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(4)上皮細胞における隣接する細胞の生死を認識する機構
  これもまた、非常に面白いけれどなかなか難しいテーマです。上皮シート内の細胞が死ぬとその細胞は押し出され、同時にその場所が周囲の細胞によって塞がれ、 上皮シートのバリア機能の破綻が最短の時間になるように損傷修復が行われます。その際には死細胞を取り巻いている生細胞の死細胞に面した側にのみ、ミオシンIIの集積が見られます。 そのミオシンIIはAJに結合したアクチン繊維と相互作用し、ミオシンIIの動きがAJを引っ張ることになります。ちょうど死細胞を取り巻いてアクトミオシンが断続的に形成され、 それがAJによって繋がり一つの環を形成することになります。アクトミオシンの収縮によりその環は小さくなり、それが損傷修復を助けます。これがとても面白いのは、 生細胞は隣の細胞が生きているか死んでいるかを素早く判断し、死んでいる細胞側にミオシンIIを集積させるということです。確かに、生きている細胞の周囲にミオシンIIを集積させ、 生きている細胞を追い出してしまってはまずいし、そのようなことは起きません。上皮シートが健全に維持され、いざ破綻が起きれば、最速で修復を行う、 その仕組みがここにあるはずです。最も肝心なのは、物質として何を感知して生と死とを見分けるのかということです。最近、これが重要だ、と報告をしている研究者もいるのですが、 追試もできないので、私は必ずしも全面的には信じていません。しかしながら、それでは何なのか、というとなかなか突破口が開けない、そのようなテーマです。

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これまでのプロジェクト

細胞質分裂
ミオシンIIと上皮細胞の形態形成
低分子量Gタンパク質の局在と形態形成



細胞質分裂
Rhoを介した分裂面決定機構の解析(西村)


  核分裂に引き続く細胞質分裂の分裂面が正しい位置に決定されないと、染色体や細胞質が適切に二つの娘細胞に分配されません。分裂面の決定に必要な因子がわかってき ていますが、それらがどのような機構で実際に分裂面を決定しているのかについては、多くの疑問が残されています。私たちは、微小管(microtubules)と低分子量Gタンパク質RhoAの 関係に着目して細胞質分裂における分裂面決定の機構の解明を目指しています。

  細胞の分裂は染色体の分離によるDNAの分配という段階とそれに続く細胞質分裂という段階からなります。分裂面の決定は、染色体分離を行う分裂装置という構造が染色体 分離の直後に行っていることが知られています。分裂装置は微小管を主成分としており、分裂面決定に関係するのは、分離後の染色体間にできる、central spindle microtubules (spindle midzone microtubules)と二つの中心体から放射状に伸びるastral microtubulesです(図1)。一方で細胞質分裂は細胞膜直下の表層部においてアクチン繊維とミオシン繊維 とからなる収縮環が縮み、それが細胞膜を引っ張ることで起こります。このアクチンとミオシンとからなる収縮は低分子量Gタンパク質Rhoの活性を必要としていることが知られていました。 私たちは、最近、細胞内のRhoの局在を正確に捉えることに成功し、RhoAが分裂面決定の時期に将来くびれが生ずる細胞表層に集積することを明らかにしました(図2)。 その集積はmicrotubulesの存在とRhoAの活性に依存していました。このことから、microtubulesはRhoAの局在を決定することで、分裂面を決定しているという考えが出てきました。 世界的にもほぼ同時期に、GFP-Rhoや活性型Rhoを認識するGFP融合タンパク質の挙動を調べた報告がなされ、みな同じ考えをするようになってきています。MicrotubulesからRhoAの活性化 をつなぐタンパク質たちも明らかになりつつあります。今後はそのようなタンパク質がどのように正しい分裂面決定に働くのかを調べることが必要になります。
          

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ミオシンIIと上皮細胞の形態形成(渡邉、米村)
  ミオシンIIはアクチン繊維上を動くモータータンパク質です。筋肉におけるミオシンIIが筋収縮を起こすことは詳細に調べられています。非筋細胞でもさまざまな現象に ミオシン IIが関わることがわかってきていますが、非筋細胞では筋肉と異なりミオシンIIは必要に応じて局所的に重合して繊維を形成したり、脱重合したり、大変ダイナミックな挙動 を示すことが知られています。このような挙動がどのように制御されているのかについては十分な解析が進んでいません。また、多細胞生物の基本的な細胞である上皮細胞のお互いの 接着やそれにともなう形態形成にミオシンIIが関与することは信じられていますが、その機構についてはほとんどわかっていません。ミオシンIIは2本の重鎖と4本の軽鎖 (2本の調節軽鎖と2本の必須軽鎖を含む)からなり、調節軽鎖のリン酸化がその重合を促進し、モーター活性を上昇させることが生化学的解析から知られています。私たちは GFPミオシンIIやその変異体を用いて細胞内のミオシンIIのダイナミクスとリン酸化との関係を解析しています。また、上皮細胞の細胞接着装置、特にアドヘレンス・ジャンクション (adherens junction, AJ)の形成において、ミオシンIIによる収縮力が重要な働きをすることを明らかにしました。そしてさらにミオシンIIの力がどのようにAJの構成要素の集積に 繋がるかを分子レベルで解析することを始めています。



  上皮細胞のシート中の細胞が死んだ時、周りの細胞の死んだ細胞に面した側にアクチンとミオシンIIとを含む、purse stringと呼ばれる繊維状の構造が出現し、その収縮 が死んだ細胞を排除し、傷口を塞ぐというwound closureという現象に重要な働きをすることが知られています。従来、wound closureの研究には細胞シートを引っ掻いて傷を付け、 その後数十分から数時間以上にわたる細胞の移動を見るという方法が取られていました。この方法では、細胞シートの端は往々にしてまくれ上がったり、強い引っぱりの力を受け結果的 に死んだりすることがあり、細胞の殺傷直後の変化を見ることは大変難しかったのです。私たちはレーザー光で上皮シート中の特定の細胞を狙って殺傷する方法を用いて、GFPミオシンII が数分以内に集積してくることを見いだしました。この系を用いて、隣接した細胞の死をどのような仕組みで察知するのかを解析しつつあります。

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低分子量Gタンパク質の局在と形態形成 (木下、米村)
  低分子量Gタンパク質(Rho, Rac, Cdc42)がアクチンとミオシンからなる細胞骨格の形成や機能を制御することが細胞生物学レベルでの実験で明らかになってきています。 しかし、細胞や組織内でそれらのタンパク質がどのように分布しているのかは不明でした。そのため細胞内の局所で起こる細胞骨格の再編成が低分子量Gタンパク質の局所的な働きに よるのかどうかは多くの場合わかっていませんでした。私たちは、信頼性のある局在を示す抗体と固定法とを確立することから始め、細胞、組織内での正確な分布を知ることができる ようになりました。この技術はRhoAの局在を通して細胞質分裂における分裂面の決定の機構を解析する研究にも応用され、また、胚発生中の神経管形成における低分子量Gタンパク質 の局在とその役割の解析という研究に繋がっています。
  ミオシンIIはアクチン繊維上を動くモータータンパク質です。筋肉におけるミオシンIIが筋収縮を起こすことは詳細に調べられています。非筋細胞でもさまざまな現象に ミオシン IIが関わることがわかってきていますが、非筋細胞では筋肉と異なりミオシンIIは必要に応じて局所的に重合して繊維を形成したり、脱重合したり、大変ダイナミックな挙動 を示すことが知られています。このような挙動がどのように制御されているのかについては十分な解析が進んでいません。また、多細胞生物の基本的な細胞である上皮細胞のお互いの 接着やそれにともなう形態形成にミオシンIIが関与することは信じられていますが、その機構についてはほとんどわかっていません。ミオシンIIは2本の重鎖と4本の軽鎖 (2本の調節軽鎖と2本の必須軽鎖を含む)からなり、調節軽鎖のリン酸化がその重合を促進し、モーター活性を上昇させることが生化学的解析から知られています。 私たちはGFPミオシンIIやその変異体を用いて細胞内のミオシンIIのダイナミクスとリン酸化との関係を解析しています。また、上皮細胞の細胞接着装置、特にアドヘレンス・ ジャンクション(adherens junction, AJ)の形成において、ミオシンIIによる収縮力が重要な働きをすることを明らかにしました。そしてさらにミオシンIIの力がどのようにAJの 構成要素の集積に繋がるかを分子レベルで解析することを始めています。



徳島大学大学院医歯薬学研究部医科学部門 生理系 細胞生物学分野
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